動物愛護先進国ドイツから何を学ぶか

動物愛護先進国として名高いドイツ。

2017年に僕がドイツに飛び、各施設を訪問して聞き、感じ、学んだことを簡単にまとめてみました。

一個人のレポートなので、実際には異なる部分もあると思うが、抑えるところを抑えているので、動物愛護に興味のある人は読んで損はない。

訪問先はもくじのとおり

ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州獣医局

詳しくはWikiみてね。

ドイツに限らずEUでも中心的な州の行政。その獣医局長に話を聞いてきた。

日本は爬虫類、鳥類、哺乳類のみが動物取扱業の対象だが、ドイツは両生類もここに含まれる。更に、魚類や節足動物であっても通報があれば現場に行き、指導助言を行う。

局長はタランチュラマニアの家でタランチュラに咬まれて、生死を彷徨ったことがあると笑いながら話してくれた。

行政の取締まり

行政対応として日本と異なる点は以下のとおり

  • 動物取扱業(ティアハイム含む)が違反(飼育数オーバー含む)した場合、即許可取り消し
  • 許可取り消し業者情報は他の州と共有
  • 業者、個人に関係なく動物を没収
  • 行政として収容施設は持たず、ティアハイムに収容依頼
  • そのため、ティアハイムへの資金助成

日本と同様の点

  •  虐待の判断基準は法令に明示されていない
  • アニマルホーダー、パピーミルに頭を抱えている

最大の違いは、虐待などを行政が取り締まり、ほぼ強制的に動物を没収している点。しかし、意外なことに、日本同様、虐待の基準はなく、没収相手から訴えられることも少なくないとのことだった。

その度に担当者と局長で裁判所に赴き、状況証拠や虐待と判断した獣医師としての専門知識を基に戦う。

もっと驚いたのは、行政が裁判に負けることもあるということ。

そんなことがあったら日本の行政は更に慎重になり、どんどん動かない行政になる。しかし、NRW州獣医局は違った。

足りなかった証拠を、次は逃すまいと反省し、次の取り締まりに活かす!!

ドイツにアニマルポリスはないが、行政機関がここまでの精神力で警察に代わる組織としての役割を担っていると感じた。

一方で悩みは同じだった。

アニマルホーダーやパピーミルは社会問題となっている。これらについては後述。

世界的に珍しい制度

行政が当該人以外から起訴される 

 動物保護団体は、州の行った仕事について起訴できる制度がある。例えば、「州が許可を出した実験は動物福祉に反している」や「この動物取扱業者に出した許可は不適切である」等。

 日本の動物福祉分野では、一般的には行政が民間を評価する一方通行だが、ここでは逆ができる。行政が民間動物福祉団体に評価されるのだ。このフェアな状況で仕事を進めるのは理想だ。獣医局も身がしまる思いで仕事をしている。

州法令の制定

日本人からすると目から鱗。

日本では法令を制定や改定する際、立法根拠に基づき行政職員が軸を作成。数人の専門家にエビデンスをもとに意見を徴し、修正していく。

ほぼ確定案となった段階で、パブリックコメントを募集し、集まったコメントに対して反応していく。このパブコメへの反応は、ほぼ「回答」で終わり、法令案に大きく影響することはない。というか言ってしまえば、この段階まで来て大きく変えなければならない状況に陥ることは恥だ。

それだけ、行政マン、専門家、場合によっては議員を含めてもみ合っている。

しかし、NRW州の獣医局は動物福祉に関する法令の場合、原案・骨子案ができた時点で州内の動物福祉団体代表に案を送付する。そして、庁舎での会議のほか、メール、電話など気軽な形で意見交換を複数会繰り返す。

まさに「官民協動で作る法令」だ。

この記事を読んでいる行政マンはぎょっとしただろう。僕もこれを聞いたときはぎょっとした。そして、この制度の導入時は獣医局長および担当者もぎょっとしたと笑っていた。

しかし、今となってはいい制度だと感じているとのことだった。

意見交換を重ねていくことで、実際に条例に反映される意見とされない意見、行政のできることできないこと及びそれらの理由を民間団体も学んでくる。これにより団体もプロフェッショナル化してきたからである。

更に、行政機関だけという閉鎖的な空間で作った条例は、施行後に団体から様々な反対意見が寄せられていた。だが、この制度の基で作った法令は団体と一緒に作ったものなので、反対意見が出ることは基本的にない。これにより、苦情の受け口となっていた担当者へのプレッシャーが軽減されることとなったのは言うまでもない。

逆に行政は民間団体から柔軟な発想、提案を受けることができ、より現実的かつ柔軟性のある法令にまとめることができる。

この制度は他の州も興味を抱いているようで、獣医局長は「この制度はドイツ全土、さらにEUに広がる」と胸を張っていた。

包み隠さずいうと、日本のパブコメ読んでもレベルの低い意見がほとんどだ。なんでも安易に禁止や許可制、厳罰化を求めるような意見も多い。だからこそ、1回パブコメ募集しただけで終わらせるのが吉と考える。だって、人間だもの。

しかし、行政は勇気をもってそれを変えてみるのも手かもしれない。

そうなると、不勉強な愛護団体は干されることになる。

両者とも変わらなければ、憧れのドイツには追い付けない。

ちなみに、最初に少し触れたタランチュラだが、局長はタランチュラ等についても飼育を許可制にしたいと冗談で言っていたが、それはあくまで冗談。

主に室内で飼育され、十分に取り締まれないことが容易に想像できる。結局、それは形だけの意味のない法令となる。そんな法令を作るのはナンセンスだとはっきり言っていた。

Zoo Zajac

この州には、かの有名な世界最大のペットショップ『Zoo Zajac』も存在する。

ここで気づいたと思うが、ドイツにはペットショップがないというのは真っ赤な嘘。ないどころか、世界最大の展示販売型ショップがドイツに存在している。

ただ、生体の展示販売に違和感を覚えるドイツ人が多いのは確かで、動物福祉に関心のある住民からかなりの頻度で州獣医局に苦情が挙がってくるとのこと。

その度に獣医局が監視に行くが、法律上なにも問題ないので、指導することもなく帰ってくるとのことだった。

法律上と言ったが、ドイツの法律は個人が飼う場合も、ショップが展示販売するために管理する場合も同じ基準が設けられている。

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仕事終わりに、局長が自分の車に乗せてZoo Zajacに連れて行ってくれた。僕らが行ってみたいと騒いだからだ。

車の後ろにはドイツ人らしく、ビール瓶が積まれていた。一瞬、飲酒運転が頭によぎったが、

「今日はたまたま買ったビールを積んでただけだ!すまん!飲みながら運転することはないから安心してくれ。帰ったら飲む」とのこと。

…ご、ごめんなさい!仕事終わりのビールの時間削って僕らのわがままに付きあってもらったにも関わらず、飲酒運転を一瞬でも疑って…と思いながら、苦笑い。でもたぶんビールを積んでるのはその日だけじゃないと思うw

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さて、本題。

広大な土地と駐車場。平日(金曜日だったかな)の夜7時にも関わらず、店内は客でにぎわっていた。

ここの情報はネット上にいっぱい転がっていると思うので、検索してみてね。

広い店内の半分は展示販売設備。小さな熱帯魚、両生類爬虫類、大小様々なインコや鶏、クジャク、中型哺乳類などの展示販売スペース。

熱帯魚は日本と変わらないが、それ以外の動物はまさにZooを思わせる展示。

動物園に行って、なんだ隠れてて見えないじゃん。と思ったことありますよね?そんな感じw売ってる動物が見えないっていうwそれくらい隠れるところがないと基準は満たさないのだろう。

もう半分は半端ない取扱い品目数を誇るペット用品。こちらも熱帯魚のカルキ抜きから大型檻まで揃えている。

ペット用品メーカーからZoo Zajacへ商品を置いてほしいと依頼が来るようで、「展示販売型ペットショップ=イメージ悪い」ではないことを象徴していると勝手に解釈した。

そこまで言わなくとも、展示販売しているこのショップを毛嫌いしているのは、少数派だということは間違いなさそうだ。

ドイツ動物保護連盟

Der Deutsche Tierschutzbund wurde im Jahre 1881 als Dachorganisation der Tierschutzvereine und Tierheime in Deutschland gegründet, um dem Missbrauch von Tieren ...

ドイツ国内ほとんどのティアハイムをとりまとめている組織。

この組織への加入は自由なので、ここに加入せず運営しているティアハイムもあるが、年会費55€と格安で様々な助言などが受けられるためほとんどのティアハイムが加入している。

動物福祉問題に精通した、生物学、獣医学及び法学分野の献身的な科学者が在籍し、ドイツ及びヨーロッパにおける動物福祉活動のための基盤を作り上げている。現代の動物福祉に関する知識がこの連盟に集まる。

先述のNRW州獣医局長の紹介でアポを取り、訪問が叶った。それくらい行政機関との繋がりが強く、まさに協力体制が築かれている。

この動物保護連盟は、ドイツが抱える動物福祉の課題を現場レベルで把握し、対応している。

アニマルホーダー

日本以上に、アニマルホーダーは社会問題になっている。

しかし、日本のホーダーとはまるで違うものだった。

  • 45歳以下の成人女性が多い
  • 仕事は様々
  • 動物種は猫、モルモット、ウサギの順で多い
  • 平均的な飼育頭数は70匹だが、ウサギで900匹の例もあった
  • 近所からの苦情(異臭等)による発覚が多い

日本では高齢独居女性における猫多頭飼育が圧倒的大多数。

しかし、ドイツは働き盛り。精神疾患を強く疑うが、2017年時点では精神疾患として認定されていなかった。

ドイツは主に働いている女性ホーダー、つまり日本よりお金のあるホーダーが多い。お金のない高齢者ホーダーの対応に追われる日本人からすると、お金があれば解決しやすいと考えがちだが、お金がある分問題が大きく発展しやすい。そして、金があっても解決できない。

実際、飼育頭数もかなり多い。

日本には日本の、ドイツにはドイツの似て非なる課題がある。

避妊・去勢手術

日本同様、無秩序な繁殖防止や特定の疾患の予防効果をうたい勧めていたが、近年その考え方は変わってきているという。病気予防も確率論でしかないと言い切っていた。

ただし、避妊・去勢手術を全部否定しているわけではないことは記載しておく。飼い主が数を管理できない場合や、外に出ることのある猫、地域猫は避妊・去勢手術適用の代表例である。

避妊去勢手術はキャンペーンを行っている。キャンペーン時は州や動物保護連盟から金銭的援助もある他、動物病院自体も通常より安価で手術を実施する。キャンペーンの対象は野良猫だけに限らず、飼い猫も対象であり、希望者全員の猫を手術する。このようなキャンペーンは飼い主、地域住民、動物病院等、全員が手術をしないことのデメリットを理解しているからこそ、実施可能なのであろう。

申し訳ないが、日本でのこのような活動に反対するのは獣医師会だ。これについて詳細は語らないが、別に獣医師会が反対することは悪いと思っていない。それだけは同記しておく。

野良猫問題とTNR(Trap Neuter Return)

野良猫は日本同様困っているケースがある。公道での餌やりを禁止している州もあるが、その自治体であっても個人の敷地での餌やりまでは規制していない。むしろ公の場で迷惑をかけないために、自分の敷地や他人の敷地で許可を得て餌を与えるように指導している。

この考え方のベースになっているのは、愛護ではなく管理だろう。ここがまさに動物愛護と動物福祉の違い、つまり日本とドイツの違いだ。ここを理解せず、ドイツ先進国論を語ってはならない。

TNRはドイツでも苦肉の策として実施しているが、実施期間は11月から2月に限る。3月以降に実施した場合、出産直前の胎児を摘出してしまうことが多いからだ。

僕は出産間近の母猫の避妊手術について、ずっと違和感を感じていた。「セーフ!もう数日してたら生まれちゃってたね!」という日本ではよく耳にするフレーズ、すっきりしなかった。現状、脱胎を受け入れざるを得ないのは理解しているけど。

それがドイツで報われたというか、違和感は間違っていなかったと思い、なんとなくホッとしたその時の感情をはっきり覚えている。

ティアハイム

意外なことにティアハイムは「動物の監獄」というイメージがあるという。日本の動物愛護センターや保健所が「犬殺し」のイメージを持たれていることと近いものかもしれない。そのようなマイナスイメージを払拭するためのキャンペーンもこの動物保護連盟で実施している。

ドイツのティアハイムはどんな動物でも引き取るスタイルではないことが多い。例えば、問題行動を理由に引き取りを依頼してきそうな飼い主の元には、ティアハイムからしつけを教えにいくなど、引き取らずに解決を試みる。

これは日本同様、飼育放棄しようとする人が多く、ティアハイムのキャパがすぐいっぱいになってしまうから。

ティアハイムには、行政が保護や強制収容した動物、飼い主から引き取った動物、負傷野生動物等が国内外から入ってくる。外国からの収容とは、東欧や南欧で収容した犬の行き先が確保できないことを意味し、そのような犬も引き取ることがあるのだ。

また、EU統合後、貿易のハードルが極端にさがった。これにより、東欧や南欧のパピーミルからどんどん輸入されている。

輸入されるということは、それだけ需要があるということ。

パピーミル問題は、ドイツにもある。

行政が収容した動物、つまりアニマルホーダーからの没収や捕獲犬猫の保管義務は本来行政にあるが、それをティアハイムへ委託していることがほとんどだ。

そのような動物の保管費用は行政が1日あたりの保管費用を支払うことになるが、最低保管期間の必要経費しか支払われない。平均的なティアハイム滞在日数は犬で3.5か月、猫で4.2か月であるため、保管期間の超過部分はティアハイムが負担することになる。

保護施設が費用面で苦しいのは、世界中どこでも変わらない。

ティアハイム・ミュンヘン

ここは一般客として訪問したため、スタッフに具体的に話を聞くことはできなかった。ベルリンのティアハイムが有名だが、最大最高峰であるため、理想ではあるが、あまり参考にならないとも思う。一方、ミュンヘンのティアハイムは中~大規模のティアハイムで、日本における各愛護センターの規模と似ていた。

とはいえ当然ながら、ドイツ基準を満たさなければ許可取り消しになるため、各動物に与えられた飼養スペースは日本と比較して広い。

犬は1頭につき屋内外の2部屋。写真は屋内の部屋と屋外の部屋、というか屋外スペース。

ただし、狭い通路にずらっと並んだ犬の部屋は、「監獄」のイメージを持ってもおかしくないと感じた。

ウサギはきれいなウッドチップが敷き詰められ、シェルター兼、遊び道具にもなる木製おもちゃが多く設置。

この子はよく見ると眼球摘出されていた。だから隔離されていたのかな。

小さいペットバードもたくさんいた。やはりセキセイやオカメのインコ類。4畳半ほどの高さのある部屋に15羽程が共生していた。インコ類はやはり集団生活がいいよね。

ボア・パイソンは6畳ほどの部屋に数匹。オオトカゲもいた。逆に小さい爬虫類はほとんどいなかった。「予想以上に大きくなって」とか「凶暴で」飼いきれなくなったという理由で持ち込まれることが目に浮かぶ。

ヤギやアライグマ、サルなんかもいた。

それぞれの動物に合わせた環境を用意していた。まさに動物園と同じ。

動物の管理は行き届いていたが、何か聞こうとスタッフを捕まえようとしても捕まらない。それくらいスタッフが動きっぱなしなのだ。これは少し困った。

金銭だけでなく、人員不足も日本同様に存在する。

まとめ

ありのままを淡々と記載してきた。どう捉えるかはあなた自身の問題。同じような悩みを抱えているととらえ、参考にし、勉強し、意見交換するか。やはりすごい、日本と違う!と憧れるだけで終わるか。

おおざっぱにまとめると以下のとおり

  1. 法で決められた飼養基準は、一般飼育者もティアハイムも、ショップも同じ
  2. 優秀なのは行政獣医師だけでない。民間団体もよく勉強している。それが協働のキーポイント
  3. ドイツも日本同様の問題(ホーダーやパピーミル)を抱えている

おまけ

ここからは完全に余談。旅の思い出。

バスの無賃乗車、罰金

実はNRW州行政に向かうバスの乗り方がわからず、ぱっと乗ったところ、無賃乗車として罰金を払わされた。8000円くらいだった気がする。

日本でも乗ったバス停を証明できないと、始発から乗った料金が徴収されるが、それと同じような感じかな?日本では「どこから乗りました?」の質問に答えると、大概申告したバス停からの料金だけにしてくれるけどね。

そうはならず、全額徴収されてしまった。

しかし、そのことを獣医局長に伝えると、「俺の力で取り返してやる!」と。

お~なんて心強い!!と同時に本当にそんなことできんのかいな?と思った。期待せずに一応お願いしたら、帰国後連絡がきた。

 

「取り返したぞ。振込先を教えてくれ。」

まじかよ!!どんな権力よ。権力ではないか?w

約束を守ってくれた男気と、なによりも有意義な時間を提供してくれたことに感謝し、返金ではなく、ドイツ動物保護連盟に寄付してもらうことにした。

行政は寄付を受けられないからね。

公園

これはとある公園で発見した看板。

公園内では、犬をノーリードで散歩している人も多い。

興味ある人は訳してみて。

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コメント

  1. […] こちらのブログは現状のドイツを端的に反映していると思いました。 ぜひ愛護団体のみなさんに読んでいただきたいですね! […]

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